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DNA電脳

形而上電脳科学教室, 1997.8.11

(注意:文章堅いです。)
 

DNA電脳の実態

DNAとはご存じの方も多いだろうが、A,T,G,Cと略される分子達の繋がった『綱』である。単にDNAと言った場合二重らせんDNAのものを指す場合もあるが、ここで考えるのはことわらない限り一重綱のそれとする。

現行の電脳(ありふれたPentiumマシンでも想像して欲しい)では、全ての情報は0と1の列で表現されている。(メモリは勿論、ハードディスクやMO、バックアップ用テープ等を含めて考えてよい。)ただし話を難しくしない為にその電脳はネットワーク等に繋がっておらず単独で計算を行う機械だとして欲しい。(ネットワークに繋がっている場合を考えたければその計算に関与している全ての計算機の集合で一つの電脳を形成していると考えればよい。)この「0と1の列」を「AとTとGとCの列」に置き換えて考えてみよう。そうすると一つのDNA分子(A,T,G,Cの列)が一つの電脳に対応する。
 

現行電脳との比較

たとえばほんの微量のDNA達でも1,000,000,000,000個(一兆個)のDNA綱を含む。上の置き換えで考えてみると一兆個の電脳による並列計算が可能だともとれる。もし、一兆個でも少ないと思うのならもっと多くのDNAを用意するのみである。その物質的な量が大したものではない事は容易にわかるであろう。

実はプロセッサ(Pentium)の話をしていないので、実はそれほどうまい話ではない。上の例えで言うと純粋に一兆個の計算機の並列処理ではなく、同じプログラムがのっている(ただしデータは各々異なる)一兆個の計算機の並列処理である。(話がややこしくなるので割愛するが、終了判定の問題もある。)

いづれにしても現行の電子方式による電脳より並列度は超越的に高い。そういう意味では期待の持てる電脳である。
 

量子電脳とDNA電脳

それでは量子電脳と比較してみよう。いきなりだが上の一兆という数字は大きいとお思いだろうか?(一京でももっと大きい数でもいいのだが)実は暗号を考える上ではそれほど大きい数ではない。

量子電脳の活躍の場の一つとして期待されている暗号解読の世界では『全宇宙に存在する素粒子の数』より大きい数さえ考えることさえ必要である。(実のところ素粒子の数を正確に知る者はいないのでこの言い方には無理がある。)そして分子の数、DNAの数は素粒子の数に比べると確実の少ないのである。一方量子電脳の並列度は理論上いくらでも大きく(素粒子の数をはるかに越えた数でも)できる。

この意味でDNA電脳の暗号解読に関しての無力さは深刻である。量子電脳の前では、DNA電脳の無力さは現行電脳が無力であるというのと同程度でさえあるのだ。言い換えるとDNA電脳は所詮「並列度の高い計算機」に過ぎず、量子電脳の強力さとは質が異なるものである。

とは言え量子電脳はまだ動いていない。(動いたという噂はたまに流れるが、その検証に成功したとはまだ聞いた事がない)その一方、実用的とは言えないにしろDNA電脳は動いた。量子電脳が理論的にいくら速いとは言え実際に動かなければ机上の空論、もしくは数学的に興味深い『おもちゃ』に過ぎない。よってDNA電脳が動いたという事実はあまりに重い。DNA電脳の研究に価値があるかそれとも無意味かは読者自身が判断して欲しい。



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